アジアの日系企業が「現地化」を進める上で検討すべき“問い”とは?
去る2022年9月8日(木)、JAC Recruitment「第3回 グローバル人材戦略セミナー」を実施いたしました。今回は、弊社で実施した質問紙調査(ご協力頂きました企業数はアジア各国から550社)、ならびに追加実施したインタビュー調査から得られた知見を考察しつつ、アジアの日系企業が「現地化」を進める上で検討すべきチェックポイントを明らかにすることを目的としました。プレゼンターはJAC Recruitment海外進出支援室室長の佐原が務めました。
スピーカー:
JAC Recruitment 海外進出支援室 室長 佐原
コロナ禍が「現地化」を促進させた?
コロナ禍が「現地化」を促進させたのでは?という仮説に対しては特に有意な結果は得られませんでしたが、コロナに関係なく全体の65%の方から「現地化」を志向しているとご回答頂きました。
本社側が主体となって「現地化」を志向する場合は、主にコスト削減・駐在員数の削減が目的となっていました。一方、海外現地法人側が主導する場合は、現地人材の活用という目的が主となるといったように、意向の所在によって本質的な目的意識が異なっていました。この点、本社と現地法人の双方ですり合わせが必要な状況が生じていると考えられます。
経営「現地化」を妨げる要因
インタビュー調査をふまえた【経営現地化を妨げる要因】ですが、①駐在員の‘ジャパンデスク化’、➁現地幹部候補人材の育成不全、③現地幹部候補人材の採用難・流動性、の3点が主要であると考えられます。④取引先からの要求(日本語対応・日本人対応)も主要因の一つですが、逆に、こうしたケースにおいては顧客へのサービス提供の競争優位性にかかわるため、「現地化」を敢えて目指さない選択は当然あり得るでしょう。
経営「現地化」を進める上での論点:チェックポイント
最終的に得られた経営現地化を進める上での論点(及びチェックポイント)は7つ。
①‘ジャパンデスク化’:本社とナショナルスタッフは、どの程度直接コミュニケーションをしているのか?
➁‘古参社員が辞めない問題’:パフォーマンスが報酬に見合わない人は社内に居ないか?
③コア人材の(金銭以外による)つなぎ止め:有望な幹部候補がもし「辞める」としたらその理由は何か?
④見守るマネジメント:やるべきでない仕事を手放すために「やるべきこと」は何か?
➄将来の経営幹部としての意識:ナショナルスタッフにおける幹部としての‘意識’とは具体的にどのような言動に表れるか?
⑥総額人件費の最適配分:現行の報酬制度は妥当か?運用は適切か?
⑦’日本語体制‘のコスト:‘日本語人材’の確保は持続可能か?本社のどこに英語力が必要か?
参加後アンケートより…
当日ご参加頂いた方々への視聴後アンケートで、上記のうち、今後検討すべきとお感じになった項目お尋ねしたところ、⑤将来の経営幹部候補としての意識醸成(42.9%) ④見守るマネジメント(39.7%) ➁幹部(管理職)の現地従業員の適正評価(38.1%)が上位3項目となりました。
特に多かった意識醸成という目に見えづらい課題を考える際、「意識がまだまだなんだよね…」という状態から、どうなったら及第点となるのか、共通認識を本社側、現地駐在員側の双方が持っておくことが、実際の登用有無を左右するクリティカルポイントになると考えられます。また、上位ではありませんでしたが、ご回答いただいた方々には、現法サイドでの日本語人材確保よりも、本社側の英語力向上を志向しておられる方が多かったのも特徴的な結果となりました。
まとめとして:【アジア人材戦略レポート】
「【駐在員はマルチタスク(が当たり前)】という前提を疑ってみる事が、『現地化」推進のポイントになるかもしれません。』という問題提起で終えた今回、ご参加頂いた皆様からは大変高評価を頂く事ができました。JAC Recruitment のスペシャリティは、採用のお手伝いにはなりますが、今後ともそうした枠にとらわれない情報提供を続けていきたいと考えております。