海外で働こうと情報収集を始めると、よく見かける・よく聞く2つの言葉「現地採用」と「現地駐在」。違いがよく分からない方も多いかもしれません。 ここでは、現地駐在との比較をしながら「ベトナムの現地採用とはなにか?」についてご説明します。
記事の目次 |
1. ベトナムの現地採用と駐在の違いとは? |
ベトナムの現地採用と駐在の違いとは?
海外で働く場合、現地法人で採用される「現地採用」と、日本本社で雇用されている駐在員として海外法人に出向する「現地駐在」の場合の大きく2つのパターンに分けられます。 「現地駐在」は、以降、日本採用(駐在)として、ご説明していきます。
| ベトナムの現地採用 | 日本採用(駐在) |
雇用元 | 現地の日系・外資系現地法人や現地ローカル企業 | 日本法人 |
給与 | 現地相場(現地通貨) | 日本での給与+現地給与 |
日本の保険、年金 | 自己負担(任意加入) | 会社負担 |
福利厚生 | 医療保険 、交通費支給(企業による) | 住宅手当、社用車支給、海外旅行保険加入、帯同家族分の手当など |
勤務地 | 異動は原則無し (自分の意志で決められる) | 会社の辞令による |
任期 | 無し(自分の意志で決められる) | 一般的に3~5年 |
裁量権 | ポジションによる | マネジメントクラス以上 |
ベトナム現地採用の、気になる待遇面について
どちらにも一長一短がありますが、やはり気になるのは給与などの待遇面でしょう。
日本採用(駐在)の場合は、会社からの辞令によって派遣されているため、その分、手当やサポートも手厚いです。マネジメントポジション以上に就く方が多いので、会社の顔として十分生活できるような待遇が与えられます。
ベトナムの現地採用の場合は、現地相場に合わせた給与のため、家賃や通勤は自分でやりくりする必要があります。(社用車の送迎がつくことはありますが、専用車支給は稀です。)
現地相場の給与といっても、ベトナム現地の平均給与に合わせてではなく、外国人として生活するのに十分な額が支給されます。物価や家賃が安いため、実質的な生活レベルは、日本同等かそれ以上になる可能性もあります。
ベトナム現地採用の給与相場
ベトナムで現地採用として就労する際の給与相場については、職種・年代・語学レベルに応じて大きく分けて下記の通りとなります。
あくまで平均的な月収の目安となりますので、ご了承ください。(すべて税込み)
職種別
営業職 スタッフレベル:1,800 USD ~2,300 USD
営業職 マネジメントレベル:2,500 USD~3,500 USD
事務職 スタッフレベル:1,800 USD ~2,300 USD
(総務、経理、営業サポートなど)
事務職 マネジメントレベル:2,500 USD~3,500 USD
IT(ヘルプデスク、SEなど):1,800 USD ~2,500 USD
年代別
新卒や未経験の場合を除き、年齢のみで給与が決まることはありませんが、あくまで目安としては下記となります。
もちろん経験年数やスキルによって、給与は前後します。
20代:1,800 USD 2,500 USD
30代:2,000 USD ~3,500 USD
40 代以上:3,500 USD~
語学レベル 別
業務内容によりますが、語学レベルに応じて、相場給与より上乗せされる場合があります。
英語ビジネスレベル以上:100~200usd
ベトナム語日常会話レベル~ビジネスレベル:100~200usd
例えば、実際に出たオファー給与のモデルケースをご紹介します。
日本またはベトナムでの業務経験や語学力、マネジメント経験の有無などによってオファー給与は異なります。
Aさん:20代後半、日本で営業経験4年、英語日常会話 → 営業職 2,000 USD
Bさん:30代前半、日本で営業経験7年、英語ビジネスレベル、ベトナム語無し→ 営業アシスタントマネージャー職 2,700 USD
Cさん:、日本とベトナムでIT開発・プロジェクトマネジメント・15年超、英語ビジネスレベル → 拠点管理マネージャー職 3,300USD
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賞与(ボーナス)・諸手当・福利厚生
ベトナムの賞与、諸手当、福利厚生は会社ごとに様々です。
日本人の現地採用者については、ベトナムの現地法人の条件を適応するところ、現地法人の条件を適応する場合でも、日本人だけローカルとは別の条件を設けているところもあります。
賞与(ボーナス)
賞与(ボーナス)は、年1回の支給が基本となります。支給月はテトと呼ばれる旧正月前後に設定している企業が多いです。
支給額については、ベトナムの商習慣に合わせ最低1カ月分~の企業が多いです。
もちろん、業績連動に合わせ1カ月~4カ月分と企業の業績や個人のパフォーマンスによって支給される場合もあります。
諸手当
諸手当については、主に役職手当、通勤手当、住宅手当、残業手当、インセンティブ、食事手当などがありますが、企業によって含まれる手当が異なる為、求人に合わせて確認いただく必要があります。
日本人の現地採用者に対しては、基本給と諸手当については面接時の相談で決めるケースも多い状況です。
通勤手当:ホーチミン市内勤務の場合は、企業が通勤費用の実費支給または50 USDほどの手当をつけています。
ホーチミン郊外や地方勤務になる場合は、通勤用の社用車の貸与またはドライバー付送迎車をつけたり、他の社員との乗合通勤となる事もあります。
住宅手当:原則として支給はありません。
残業手当:支給無しとなるケースが多いです。日本人の場合、一般的にはマネージャークラス以上の役職での採用となり、残業手当は無い所が多いです。
食事手当:オフィス勤務の場合は原則として支給はありません。
製造業の工場勤務の場合、工場内には社員食堂がある企業も多く、食事手当として食堂利用の補助がある場合があります。工場で勤務する日本人社員に対しては、日本食のお弁当を出前注文しているところもあります。
福利厚生
福利厚生は、非金銭報酬で主に有給休暇、保険、退職金、社員旅行、社内パーティーやスポーツイベント等があります。
有給休暇:年間12日(1カ月1日)で設定している企業が多いです。初年度の有給は勤務月数に合わせて支給されるため、初年度より使用可能です。
保険:ベトナムで就労する場合は、社会保障に強制加入となり、毎月の給与から3%差し引かれます。ベトナム国内の社会保障適用病院を一か所選択し、基本的に診察費~薬代無料で医療が受けられる制度となりますが、基本ベトナム語しか通じなかったり、野戦病院の場合も多かったり、混雑して待ち時間が長いなど外国人にはハードルの高い制度です。
そのため、民間医療保険(グループ保険含む)や海外旅行保険に別途加入している企業が多い状況です。
日本人求人の依頼のある日系・外資系企業のほとんどは民間保険を導入しています。
プロビデントファンド:ベトナムの退職金給付制度は、失業保険が十分に納付されていれば雇用者は支払う必要はありません。
ベトナムにおける退職金は、退職手当(雇用契約の終了)、失業手当(雇用者の都合)の二種類があります。どちらも退職金の支払いは失業保険基金から支払われます。
金額は勤続12カ月以上の勤務について、退職前の直近6カ月の平均賃金の半月分の賃金となります。
社員旅行・社内パーティ・スポーツイベント:プライベートでの人と人との繋がりや人間関係を重視するベトナムならではの福利厚生です。社内イベントの有無が離職率にも影響を与えるほどです。
所得税
ベトナムの所得税は月次給与が900万ドン以下(約月額5万円)は免税になり、1~12月の暦年で計算されます。したがって高所得者(外国人含む)が課税の対象となっております。日本と同じく累進課税で年間の所得に対し0~35%の税率が適応されます。
申告手続きは一般的には企業の人事や経理が行ってくれます。
なお、ベトナムにおける個人税は「所得税」のみとなります。日本における「地方税」のようなものはありません。給与支払者が源泉徴収を行い、国内給与と合算して毎月申告・納税がなされます。また、日本同様、年末調整及び確定申告を行う(もしくは会計事務所に確定申告の代行依頼をする)ことになります。
雇用形態
ベトナムの現地採用者の雇用形態は、基本契約社員となります。
契約社員雇用の場合は、1年での契約更新としているところが多く、パフォーマンスに問題なければ、そのまま契約更新となります。 (更新される場合はほとんど)
契約社員の待遇については企業により異なりますが、契約社員でも正社員同様に賞与(ボーナス)、昇給、福利厚生制度が受けられます。
ベトナム現地における日本人求人の傾向
ベトナムは、ベトナム人の雇用を守ることに重きを置いているため、「日本人(外国人)でなくてはならない仕事」であるかということがポイントになります。
日本人現地採用の求人は、主に日系顧客対応を行う営業やベトナム国内で人材が不足している管理ポジション、ベトナム在住の日本人をサポートするカスタマーサポートのポジションが多い傾向です。
業界
多くの製造業が進出している関係で、日本人の需要は製造業に偏っています
自動車製造に関わる自動車関連部品メーカー、 金型メーカー、機械メーカー等からの求人数が多く、ここ最近ではFA機器関連企業からの求人も増えています。
非製造業では、IT・物流・商社からの求人数が目立っています。また、金融・コンサルティングファームが専門性のある人材を募集することもあります。
職種
職種としては、約50%を営業職が占めています。
営業と一言でいっても、未経験でも応募可能なジュニアポジションや日系顧客からの問合せ窓口としての内勤営業、同業界での経験を活かした即戦力としての営業ポジションなど幅広くあります。
営業(ベトナム国内日系企業向け既存営業・新規開拓、海外営業)
工場管理(工場全般の管理、運営)
技術(品質管理、生産技術、設計、金型・加工、生産管理)
IT(ヘルプデスク、SE、デザイナー、PM)
事務職(秘書、営業事務など)
カスタマーサービス
会計士、コンサルタント、弁護士
勤務地
ホーチミン市
ハノイ市
ホーチミン市近郊(ビンズオン省、ドンナイ省:ホーチミン市から車で1 時間程度)
ハノイ市近郊( :ハノイ市から車で1 時間程度)
ベトナム中部(ダナン市:ハノイ市から飛行機で1時間強)
※ベトナム中部(ダナン市、フエ市など)は日系企業の進出が少ないため、求人案件はあまりありません。
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ベトナム現地採用において、求められる人物像
前述のとおり、企業がベトナム人ではなく日本人(外国人)を採用するにはそれなりの理由が必要です。
「業務経験」「技術力や資格」「語学力」「人柄」など様々な要素がありますが、何か一つでも自信を持ってベトナムやその企業に貢献できると言えるものがあれば、十分アピールポイントになると思います。
ベトナムで働く現地採用に求められる人物像としてまとめると下記となります。
1. 四大卒以上 ※基本ビザ取得要件に大卒が求められます。
2. 職務経験最低3年以上 ※新卒が応募可能な案件は限られております。
3. 語学力
英語: TOEIC600~700点(目安)以上が理想となりますが職種などにもよります。
求人票に「日常会話以上」という表記がある場合はベトナム人スタッフとの意思疎通、書類作成、メールのやり取りができれば可というレベルだと思ってください。
ただし、TOEICなどの点数よりも現場でのコミュニケーションを重視することが多いので、企業との面接内でスピーキングチェックを行い「話す」「聞く」スキルを判断されることもあります。
ベトナム語 : 日常会話以上できれば、アドバンテージとなります。
多くの場合は、ベトナム語の読み書きの必要は無く、簡単な業務指示や意思疎通が図れれば尚良いとなります。
4. ベトナム在住経験のある方 ※留学経験やベトナム駐在・就業経験があれば尚良いです。
ベトナムの現地採用のメリットとは?現地採用=自分で自由にキャリアを描ける
ベトナムの現地採用として働くメリットはなんでしょうか。自身のキャリアを考えたときに、下記のような点があるかもしれません。
自分の好きな国で好きな期間働くことができる(納得いくまで海外で挑戦できる)
日本ではなかなか入社できない大手企業や外資系企業で働けるチャンスがある
若手の場合は、未経験業界・業種への挑戦できるポジションが多い
実績やスキルによって日本採用に登用してもらえるチャンスがある
日本へUターン就職する場合でも、海外就労経験や英語力がアピールポイントとなり、キャリアアップにつながる可能性がある
ベトナムで現地採用として働く多くの日本人にお会いするなかで、皆さんそれぞれのメリットを感じられています。今は気づかなくても、日本にUターン就職した後に現地採用としての就業経験をプラスにとらえられる方もいらっしゃいます。
ベトナムの現地採用は、自分次第で可能性は無限大に広がります。もし少しでもベトナムで働くことに興味を持った方は、お気軽にご相談ください。
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